Observe_classic’s blog

クラシックに関してあれこれ語る場所です。演奏会の感想や日々聴いている曲について書くことが多いです。

アレクサンダー・ガジェヴ ピアノリサイタルin北九州 響ホール

昨日は第18回ショパンピアノ国際コンクールで反田恭平さんと第2位を分け合ったアレクサンダー・ガジェヴさんのリサイタルに行ってきました!

なんとショパコンで実際に使用していたピアノを持ってきての演奏!期待が高まる中、ホール内で演奏会の案内チラシを見ながら待っていました。

 

今回は北九州の響ホールというところだったのですが、この会場は何度か来たことがあって私も実際にコンクールで弾いたことがあります。(←全然ダメで良い思い出ではないですが(笑))

なんだが懐かしいな~と思いながら待っていると、ホール内の照明が全て落ちて真っ暗に…!( ゚Д゚)

 

照明さん間違えちゃったのかな…?などと思いつつ待っているとガジェヴさんからの演奏前のコメントが流れ始めました。

コメントからは本人の音楽に対する考え方、哲学的ともいえる捉え方が垣間見えました。簡単に述べると、

「音楽は言語であり、言語が生まれるはるか昔から音は存在していた。現代ではあまりにもたくさんの情報が流布しており、音を愉しむことが難しくなっている。光の前に闇があるように、音の前に静寂がある。そこで演奏を楽しんでいただく前に2分間の静寂を体験していただき、演奏を、音楽を味わってほしい。」とのことでした。(ざっくりなのでちょっと違うところもあるかも…)

 

照明が落ちて暗闇と静寂に包まれた中、コツコツと歩く音が聞こえ、スポットライトがステージに照らされるとなんとガジェヴさんがすでにピアノの前に!

凄く凝った演出だったので、どんな世界が広げられるんだろうとワクワクしながら聴いた最初の曲はバッハのフランス組曲第4番。

 

最初のアルマンドは色彩感溢れる演奏ですごくしっとりとした印象。静寂の後に聴いたためか幻想的にも聴こえて初めからグッと引き込まれました。演奏しているところを見るとペダルを細かく踏みかえて音がしっかり浸されるように紡いでおり、独創的な空間が広がっている感じがしました。

昔はバッハといえば、あまり飾らず形式や和声など構造面にフォーカスしてカッチリ弾く演奏が好まれていたように思っていましたが、最近の印象としてはピアニストが持つ音でバッハと対峙してそれぞれの音楽を表現している印象を受けます。

バッハの曲がどんな編曲でも受け付けるように、ピアニストが表現したい世界観をしっかり演奏に落とし込めれば十分説得力を持った演奏になると思っています。

入りのアルマンドがすごく特徴的だったため、次はどうかなと思っているとクーラント以降は割とバロックらしさも感じられる演奏でまとめられていました。

こういう新しいバッハの演奏を聴くとやっぱり音楽って改めて深くて無限の可能性があるんだな~と感じます(笑)。

 

バッハの後に演奏されたのはショパンノクターン。今回はOp.15-1,2を演奏されました。(Op.48-1はプログラムにあったものの演奏されず…(T_T)

Op.15-1の明暗がくっきり表現されており、世界観だったり表現したい空間を生み出すのがすごく上手いピアニストだなという印象をここで受けました。続くOp.15-2でもロマンティック色溢れる演奏…。

 

うっとりしている中始まったのがスケルツォ3番Op.39でした。が!しかしここでなんとも暗譜の怪しい演奏が始まり、終始ハラハラさせられました(笑)。

中間部で明らかに数小節飛ばしてしまった後は明らかに精彩を欠いており、最後のCisの音もなぜかズルっと外して濁してしまうというやってしまった感満載の演奏でした。

実は私もこの曲は演奏したことがあるのですが、一度間違えだすと止まらないのが本当に怖い曲です。これほどのピアニストでも同じような状況に陥ってしまうところを見ると、ピアニストもやっぱり同じ人間なんだな(←当たり前)と思います。

 

その後のフランクの「前奏曲、フーガと変奏曲Op.18」は弾く前にかなり時間を取っていたため、やはり動揺していた部分はあったかなと思いますが、ここでしっかり整えて素晴らしい演奏を展開するあたり、やはりさすがだなと思いました。

 

後半のムソルグスキーの「展覧会の絵」は実際に展覧会を見て回っているかのような情景が浮かび上がってくる演奏で、本当にブラボーな演奏。ガジェヴさんは割とスラっとしていて決して身体は大きくないのですが、フォルテの時はすごく重厚な音が出ていて、展覧会での荘厳な空気感が出ていた印象です。

 

アンコールではスクリャービンショパン、バッハのプレリュードを演奏されていました。この方やはり素晴らしいのが、短調の曲やしっとりした曲でその世界に聴衆をしっかり引き込み覆いつくせるところ。感動的な演奏で最後は皆さんスタンディングオベーション。聴衆のみなさんも最後までガジェヴさんを称えておりすごい温かい気持ちになれるシーンでした。

 

公演後はホワイエにてサイン会が開かれ、私もCDを購入しサインをゲット!

まだ聴けていませんがこれから聴いてもっとガジェヴさんの演奏を愉しめればと思っています。

ニコニコとサインされていたのが印象的で、これだけの実力とそのキャラクターがあれば人気が出るのも納得できるなと思いました(笑)。

また福岡に来たときはぜひ聴きに行きたいと思いますし、今後の活動も応援したいなと思えるピアニストでした!

 

練習曲でも魅力たくさん。ショパンの「エチュードOp10、25」 その①

初めて書く曲は何が良いかなと考えた時にこれまで一番耳にしてきた曲にしたいなと思い、真っ先に浮かんだのがショパンエチュードでした。また、個人的にピアノでもいっぱい練習していたこともあって一番書きやすいかなと思いました。

 

ショパンエチュードは有名な曲が多く、代表的な曲で言えば「別れの曲」Op.10-3や、「革命」Op.10-12が挙げられると思います。皆さん耳にしたことのある曲がショパンエチュードには多く、また親しみやすいメロディーで構成された曲ばかりですので、初めてクラシックを聴く方にもオススメできる曲集ではないでしょうか。

私が高校生の時に、友人が「最近クラシックを聴いてみたいと思ってるんだけど、何から聞いたらいいかな?」と訊かれてオススメした一つがこのショパンエチュードでした。その友人に感想を聞くと、「知ってる曲もあったし、明るい曲も多くて聴きやすかった!」と好評でとても嬉しかった記憶があります。(^-^)

 

練習や本番ではあまり良い思い出のないショパンエチュードですが(←単に下手)、アルバムを聴くとやっぱりよくできた曲だなと今でも感心させられます。

 

せっかくなので何回かに分けて全曲を私なりに紹介してみようかなと思います。

 

①:Op.10-1

 

 この曲は「滝」とも呼ばれることがあり、その名のとおり高い音域に上っては下りを繰り返す曲です。非常に快活な曲ですが、ピアノをそこそこ弾けて楽譜が読める方はこの曲を初めて見た時に「あれ、これ届かないんじゃないの…?」と思われたりするかもしれません。確かにそのままだと届かないのですが、ショパン特有の手首を柔らかくして上手く回転させるように弾くと手の小さい方でも弾けちゃうんです!( ´ ▽ ` )ノ

ただ手が大きくても弾きにくいところはあるようで、人によって弾きにくい箇所はそれぞれ違うようです。それでも華やかで流麗な曲に聴かせてくれるピアニストはやっぱり選ばれし天才たちの集まりなのでしょう…。

 

②:Op.10-2

この曲はとにかく「弾きにくい!」の一言で済ませたいのですが、その弾きにくさが聴いてる人には中々伝わらない何とも演奏者は虚しい曲です(笑)。

半音階で上昇下降を繰り返すのですが、あまりの弾きにくさに単調に聴こえてしまう演奏もしばしば…。それでも強弱やリズムを上手く処理されれば不気味に小躍りしてるかのような雰囲気が出て、そのリズムやフレーズに乗って聴くことができると楽しさが増す曲だと思っています。にしても、2曲目から演奏者、聴き手の両方を苦労させる曲を組み込んでくるショパンの鬼畜っぷりには感服するばかりです(笑)。

 

③:Op.10-3

「別れの曲」で言わずと知れた名曲です。私はこの曲が有名になるきっかけとなった昔のドラマを知らないのですが、聞いた話によるとそのドラマの影響でこの曲を弾きたいという人がたくさん現れたとか。有名な曲だけあってこの曲に関するショパンの発言や曲のスピードなどの逸話がたくさんあり、枚挙にいとまがないほどです。

中間部の速くなる部分で挫折した方も多いのではないかと思いますが、Op.10-1でも紹介した弾き方によって、ある程度難しさが緩和されます。メカニック(動きのみ)的には難しくないですが、やはりとても美しい曲なだけあってメロディーでいかに人の感情を捉えられるかが勝負。そこでテクニック(弾き方や聴かせ方の工夫)が問われるため本当はとても難しい曲です。しかしショパンのことを「ピアノの詩人」とはよく言ったものだなぁと常々感じさせられる曲です。

 

④:Op.10-4

太〇の達人でこの曲を遊んだ方にとっては馴染み深い曲ではないでしょうか。Op.10のエチュード集の中でも革命の次に激しさを持った曲です。短調で書かれていますが、曲調はとてもアグレッシブでカッコよく聴こえるのが印象的です。Prestoでとても速いため難しい曲なのですが、要所で弾き方を工夫することで弾きやすくなります。ショパンは本当に優れたピアニストでもあったため、どのようにしたら弾きやすいかを楽譜にしっかりと残してくれています。それを見落とすことなく拾い上げて演奏に反映させることができれば、カッコよく弾けること間違いなしでしょう(笑)。それが面白くもあり難しくもあり、簡単にいかないところがピアノの奥深いところではないかと思っています。

 

今回はまずショパンエチュードOp.10から最初の4曲を取り上げてみました!

本当はあと2曲ほど書きたかったのですが、体力が持たず…_| ̄|○

どの曲にも共通していることですが、やはりピアニストはたくさんの工夫や趣向を凝らしています。どのような工夫が曲の中で必要となっているのか少しでも知ることで、曲の聴き方は大きく変わってくると思っています。注目できるポイントはたくさんありますので、ぜひ自分なりのポイントを見つけて聴いてみてください!新たな発見と共に曲を聴く愉しみが得られると思います!

 

初めてのブログ

初めまして!このブログはクラシック音楽が大好きな私が日々鑑賞したクラシック楽曲についてあれやこれやと考えを巡らせるブログにしたいと思っています。

クラシックはJ-POPやK-POPなど音楽ジャンルと比べて一般的に「難しい」、「とっつきにくい」と思われがちだなと常々感じています。どんな音楽にも必ずその人なりの「愉しみ方」というものがあり、それを見つけることで皆さん音楽を愉しんでおられるのではないでしょうか。クラシック音楽にももちろん人それぞれの「愉しみ方」が存在していることは間違いないと思っています。ここでは私なりのクラシック音楽の「愉しみ方」を書き綴っていければと思っています。また、もし私なりの愉しみ方で共感して頂けたり、少しでも面白そうだなと思って頂くことができればこの上ない喜びです。

ここではメジャーな曲からマイナーな曲まで取り上げていきたいと考えています。また、私自身ピアノをしていることもあり、ピアノ曲に偏りがちになるのではと考えていますがご了承ください(^^;